レビュー/スコア9.0 Sekiro隻狼 シングルプレイアクションの到達点

ゲーム概要

Sekiro/隻狼は、ダークソウルシリーズ、アーマードコアといったゲーマー向けハードコアアクションの老舗で知られるフロムソフトウェアから完全新規タイトルとして発売されたシングルプレイの戦国剣戟アクション。時代背景は日本の戦国末期。主人公は、不死の力である”竜胤”を持つ御子に仕える隻腕の忍”隻狼”。御子の持つ竜胤をめぐる戦いが葦名にて繰り広げられる。

過去の成功との決別、新たな挑戦

筆者はフロムソフトウェア作品は積極的に遊んでいるので、当時はダークソウルが完結後のフロムソフトウェアが次に何を作るのかとても注目してました。周りを見てもダークソウルやBloodborneの流れを汲んだマルチプレイありの洋風アクションRPGを期待しているファンが多かったように思います。ところがSekiroでは完全シングルプレイ、和風、固定主人公、幅広いビルドなし、と過去作でウケた要素をなんとバッサリ切り捨ててしまいました。

和風や固定主人公はまだしも、シングル専用&キャラクタービルドなしは今の時代やるには相当他の要素に自信がないとできないストロングスタイル。ましてやフロムはその二大要素を上手く活かしデモンズ以降の大ヒットを生み出してきた経緯があるので、そこを手放すのはかなり挑戦的な決断だったと思われます。筆者はソウルシリーズの和風版くらいに考えていたのですが、どうも話を聞いてみるとと「全然違うぞ!?大丈夫なのか?」と困惑しました。

果たしてその結果は…。

激しい刃の打ち合いを奨励するバトルシステム

バトルシステム 〇

体幹システム

Sekiroの魅力を伝えるにはシステムを理解していただく必要があるため、簡潔に説明します。本作には体力ゲージとは他に体幹ゲージというものがあり、敵の体幹ゲージを削りきることで相手は姿勢を大きく崩し一撃必殺技で絶命させることが可能になります(ボスはライフが複数あり、何回か体幹ゲージをゼロにする必要があります)。 攻撃による体力ゲージへのダメージは少なく、体幹ゲージを削りきって倒すのが基本となります。

相手の体幹ゲージを減らすには「1.攻撃を加える」「2.相手の攻撃をジャストガード(以下、弾き)する」「3.ガードブレイクする危険な攻撃(以下、危険攻撃)に対して正しい対応アクションをとる(突き属性には前方回避、下段属性にはジャンプ攻撃)」の3つ。これらSekiroにおける鉄の掟となります。狩人や不死人の頃の記憶は全て忘れましょう。

ジャストガードや特定行動対応は多くのアクションで採用されている普遍的なシステムですが、あくまで上級者がよりアドバンテージを得るためのオプションに収まることが多い印象。Sekiroではクリアに必須の根幹にこれらを組み込んでいます。

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敵の体幹を削りきることで一撃必殺の忍殺を決めることが可能

体幹システムによりアクションの何が変わったのか

相手を倒すには「1.攻撃を加える」だけでは不十分で、「2.相手の攻撃を弾く」「3.危険攻撃に対して正しい対応アクションをとる」といった敵の行動を理解していないとできない”防御行動”を要求されます。体幹は時間経過とともに回復していくので、Sekiroではもはや敵の周りをぐるぐる回り、攻撃の終わり際にチクッとさして逃げまわるだけでは勝てなくなったのです。

つまり、プレイヤーは否が応でも敵との激しい打ち合いの土俵に引きずり出されるということを意味します。激しい剣戟の応酬を奨励するバトルシステムと言えます。

Bloodborneでは攻めに”リゲイン”という報酬を与えプレイヤーに前に引きずり出しましたが、本作では守りにインセンティブを与えることでプレイヤーを前に出るよう促しています。

しかし何事においても守るというのは攻めるよりも難しいのは周知のとおり。ジャストガードや相手の行動に対応するといった発展的な守備行動をクリア必須技能に置いてしまうと非常に難しいゲームになってしまうはずです。が、そこのフォローの仕方が非常にスマートなんです。

緻密なバランスの上に成り立つ体幹システム

ゲームバランス 〇

システマティックな敵の攻撃パターン

基本的に敵の攻撃は単発で放つものは少なくほとんどが2回以上の連続攻撃です。さらに連携が途中で複雑に派生したり、途中止めすることはありません。つまり始動さえ特定出来たら後に続く攻撃は固定パターンなので、連続攻撃の弾きが非常にとりやすいように配慮されています。これがもし単発攻撃の種類が多く、どれが出てくるかわからない状態で目押しをしろと言われたらできる人は恐らくそういないでしょう。

また、危険攻撃はフリーの状態から放ってくる敵はほとんどいません。中には仕掛けてくる敵もいますが発動が非常に遅く、かわすことに専念すればまず当たらないレベルの遅さ。基本的には連携の中の同じポイントで使ってきます。戦いの中で「こいつ、この攻撃の後必ず危険攻撃使うな!」ということに気付くことで、あらかじめ意識を割くことができ反応が可能となります。超反応は一切必要なく、必要なものは「学習だけ」という作りになっています。

クソボス化しやすい複数ボスもこの調子でシステマティックに動くため、まったく理不尽な難易度にならずに戦いに集中することができます。あまり詳しく説明すると攻略のネタバレになってしまうので割愛しますが、カメラ外から何の予兆もなく別のボスに殴られたり固めや起き攻めでハメられたりといった複数ボスでありがちな”どうしようもない攻撃”はありません。

敵の行動がパターン化しやすいということは、語弊を恐れずに言えば”ワンパ野郎”だともいえます。おかげで従来のゲームでは上級者向けに用意されていたジャスガや対応行動といった発展的な防御行動を、全てのプレイヤーが気軽に使える基本システムに落とし込むことに成功しています。

敵も弾きを使用してくる

プレイヤーの攻撃を敵にガードさせた場合、先に動きだせるのはプレイヤーなのでガードの上から斬り続けて体幹を減らすことができます。しかし連続攻撃を浴びせていると敵も主人公同様”弾き”を使用してイニシアチブを取り返してきます。プレイヤーの攻撃が弾かれた場合、次に先に動き出せるのは敵側になり敵にターンが渡ります。この非対称性により一方が攻撃をし続けるということはなく、激しい攻防が繰り広げられる作りになっています。

失敗から学ぶことを求めるゲーム性

ごめんなさい…”ワンパ野郎”とか調子に乗って吹かしましたが、それはあくまで敵の手の内を知った後から言えることで、初回プレイではとてもじゃありませんがそんな軽口は叩けないほどにボロボロのメタクソに叩きのめされました。

バランスブレイカーの武器や技を押し付けて敵の動きを無視して蹂躙したり、レベルを上げて圧倒的な攻撃力と防御力でゴリ押すRPG的解法は基本的にないので、先に進むには自分が敵の動きを学ぶほかないのです。

トライアンドエラーを支える回生システム

敵の動きを学ぶ上でもシステム的なフォローがしっかり入ります。その場で一回復活できる回生というシステムがあります。これは単に難易度を緩和するという目的以外に、敵の動きを学習することが必須の本作においてリトライのストレスを軽減する妥当かつ画期的なシステムだと思いました。

もしこれがなければ再挑戦までの移動やロードの時間が倍になっており、ボス戦のストレスが高くなっていたでしょう。かといって完全にストレスをなくすために即リトライ可能だと今度は緊張感が抜け雑にプレイしてしまうリスクがあるので、回生はリトライのストレスを軽減しつつ緊張感を担保するいい落としどころだったと思います。

やはり達成感に多少の挫折や努力はつきもの。この一見ストイックなスタイルこそがクリア時の達成感と爽快感の源であり、この作品の肝であると言えます。上手い下手はまったく関係なく試行錯誤が好きで根気のある人が特に楽しめるゲームだと思います。私は下手の横好きですが、根気だけはあるので最後まで存分に楽しむことができました。

想像力を掻き立てる芳醇な世界観

世界観 〇

退廃的、だけど美しい戦国風情

架空の国ではあるものの戦国末期風を舞台にした日本の馴染み深い風景は遊んでいて非常にしっくりきます。戦火で朽ちた城跡、不気味な辺境の集落、神秘的な渓谷、荘厳な寺社など戦国要素が映えるビジュアルはしっかり抑えており、立体的なマップであることも相まって各スポットを探索する楽しさはデモンズ以降のフロム作品でも随一でした。

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共感を得られるかはわかりませんが、フロムソフトウェアの作品は「理由は分からないが強烈に印象に残る不気味で神秘的なマップ」がたびたび出てきます。滅茶苦茶難しいとか、すごい景色が良いとか、単純にマップとして出来がいいとか、そういうことではないと思うのですが何故か心を動かされる場所。そういった場所が本作には非常に多かったです。(ちなみにマイベストスポットを選ぶなら金剛山仙峯寺です。)

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大筋を理解するだけなら難解な考察を必要としないストーリー

なんと本作、あらすじの理解や登場人物への感情移入に高度な考察と作品知識は…要しません!明確にはならない設定や要素は部分的にあるものの、話の大筋は同社作品にしては超がつくほど明快です。

これは私のおつむが足りないだけかもしれませんが、恥ずかしながらソウルシリーズにしろブラッドボーンにしろ主人公が何を目的に誰と戦っているのか理解できずに遊んでおり、ゲームをクリアしたときに難易度的な達成感は得られたもののストーリーについては「結局何だったの?」と思うことがかなり多かったのです。

しかし本作は主人公の戦いの動機も目的も把握しながら遊ぶことができ、クリアすることで一つの物語を見届けた実感を得ることができました。上位者向けのストーリーもいいのですが、私はその手の考察はさっぱりできないたちなのでカジュアルにストーリーを楽しめるというのは助かります。

また登場人物達も理解可能な価値観と動機をもって行動しており、「この人敵?味方?何が目的?」「結局あの人何だったの?」となることはことはありませんでした。一癖も二癖もある渋いキャラクター達が続々登場し、言葉数は少なくとも存分に生き様を見せつけてくれ、世界に浸れます。

犠牲になった要素

中毒性 △

覚えゲーである

ジャストガードと特定行動対応という本来なら高度な防御行動をカジュアルに楽しめるようにするために、ランダム要素を極力廃し固定パターン連携を多用するよう管理された敵は、ネタさえ割れた後はテンプレにテンプレで返す覚えゲーの様相を呈します。ゆえにランダム性やアドリブ性が高い同じく良くできたアクションに比べると、何百体倒しても飽きないというような中毒性はないかもしれません。

プレイ幅の狭さとリプレイ性の低さ

キャラメイク&ビルドとマルチプレイができたフロムソフトウェア過去作と比べるとやはりプレイの幅は狭く、リプレイ性も低いです。主人公狼の獲物は刀とサイドアームの忍具、スキルのみで、ステータスも攻撃力・体力(体幹)のみという男らしさ。

マルチエンディングで毎度おなじみの難易度上昇した周回プレイも可能ではあるものの、武器やビルドといった基礎部分の変化は望めないので2周目以降もやることは基本的に同じです。苦難、厄憑きといった高難度モードに挑戦し弾きや対応の精度を上げたり、普段使わない忍具や流派技を積極的に取り入れてみるぐらいの変化におさまります。

しかしこれだけプレイヤー側の選択肢を絞ったからこそ、バトルシステムと敵の動きをタイトに調整できたという点は否めないと思います。選択肢は多ければ多いほど調整は難しくなるのは当然でしょうし、いろいろな武器が使えて、ステータスも自由に成長させられて、マルチもあるシステムで今のsekiroと同等のバランスを望むのは流石に酷というもの。

では逆に、今のバランスを犠牲にしてそれらのオプションがあれば今より面白くなっていたかと言われればわかりませんが、少なくとも唯一無二の個性は失っていたと思います。

レビュースコア

9.0
  • 世界観 〇
  • ストーリー 〇
  • キャラクター
  • グラフィック
  • バトルシステム 〇
  • ゲームバランス 〇
  • 操作性・UI
  • ユーザビリティ
  • 中毒性 △
  • カジュアル向け
  • ゲーマー向け 〇
  • × プレイ時間

総合評価

完全シングルプレイ、固定主人公、幅広いビルドなしには理由があったと納得させられる出来でした。売れ線の要素を極限までそぎ落としたミニマルなシステムにも関わらず調整の仕方一つで今までのどのアクションゲームとも異なる独自性を生み出しているのは本当にすごいことです。

成功した手法は味がなくなるまでしゃぶりつくすのがエンタメ産業の常で、オーディエンスがいる限り大ヒット作品は永遠に眠らせてもらえないものです。フロムソフトウェアはせっかく一大シリーズに成長したダークソウルを3であっさりたたんで、唐手でふらっとどこかへ行ってしまった。と思ったらまたフロムはまた面白いものを手中に収めて帰ってきた。アカギしげるかよ。

癖のある作品ではあるものの、やみくもに難易度を上げるのではなくむしろ多くのプレイヤーが楽しめるようにあらゆるところで工夫が凝らされています。アクション好きやトライアンドエラーが好きなゲーマーなら絶対押さえておいてほしいシングルプレイアクションの革命児です。